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高松高等裁判所 昭和37年(ラ)67号 決定 1963年6月11日

抗告人 八木円次郎

相手方 宮本猛

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

本件抗告の趣旨は、「原決定を取り消す。抗告費用は相手方の負担とするとの決定を求める。」というのであり、その理由は別紙理由書記載のとおりである。

そこで、先ず右抗告理由における主張について考察する。

申立人と相手方間の徳島地方裁判所昭和三三年(ワ)第九〇号土地所有権確認等請求事件につき、訴訟費用は申立人(原告)の負担とする旨の裁判がなされ、右事件の控訴である当庁昭和三五年(ネ)第三八三号事件につき、控訴費用は申立人(控訴人)の負担とする旨の裁判がなされ、右各裁判が確定したこと、相手方が右事件の第一審の受訴裁判所たる徳島地方裁判所へ右各裁判の訴訟費用額確定の申し立てをなし、その申し立ては同庁昭和三七年(モ)第三七三号事件として係属したこと、その事件につき決定をなすべき裁判所が裁判所書記をして、申立人に対する催告書を作成させ(原審の記録に編綴されている催告書には裁判官の認印がある。)、同書記がこれを申立人に送達させたこと、その催告書には、申立事件名、申立人及び相手方の住所氏名、本案たる第一審の事件名、その事件について訴訟費用額の確定を求める申し立てがあつたから催告書送達の日から一〇日内に意見を申し出るべき旨等が記載され、かつ、相手方(確定申立人)提出の計算書が添付されていたこと、右催告書には、催告者として、徳島地方裁判所と記載され、同裁判所印が押捺されていたが、部名や裁判官名の記載はなく、裁判官の印影もなかつたこと、申立人が右催告期間内に意見を申し出でなかつたので、前示決定をすベき裁判所が訴訟費用額を金二万四千三百六十二円と確定する旨の決定をなしたことはいずれも本件に関連する事件記録及び申立人提出の催告書によつて明白である。

申立人は、要するに、右催告状には、催告者が明示されていないから、適法な催告と見ることができず、原決定は民事訴訟法第一〇一条第一項に規定する手続きを欠いた違法があると主張するのである。ところで、同条項に規定する催告の主体は訴訟費用額確定決定をすべき裁判所(裁判機関たる裁判所)であると解すべきではあるけれども、その催告は一種の意思の通知であつて、裁判ではなく、費用計算書を添付すべきほかは、どのような形式または方法でこれをなすべきかについて法律の規定はないから、相当な形式または方法でなせば足り、結局、訴訟費用額確定申立人、申し立てを受けた裁判所(第一審の受訴裁判所)、訴訟費用負担の裁判のなされた事件、催告期間等、被催告者をして、陳述並びに費用計算書及び費用額の疏明に必要な書面の提出(本件では陳述のみ)をするのに支障を生じない程度の事項並びに催告が決定をなすべき裁判所の意思に基づくものであることを了知させ得るような形式または方法でなされておれば、その催告は適法であつて、必ずしも催告者を明示する必要はないと解するのが相当である。

本件の催告書には、前認定のとおり、右の程度の事項は記載されており、かつ、徳島地方裁判所名とその印影があるから、その書面が訴訟費用額確定決定をなすべき裁判所の命により担当者の作成したもの、すなわち右裁判所の意思に基づいて発せられた催告書であることは容易にこれを了知することができる。従つて、前認定の催告書の送達によつてなした本件催告は民事訴訟法第一〇一条第一項の規定に違背するところはないというべきであつて、抗告人の主張は失当である。

なお、記録を精査すれば、その他の点においても原決定は相当であると認められるから、本件抗告を棄却することとし、抗告費用の負担につき、民事訴訟法第九五条第八九条を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判官 安芸修 東民夫 水沢武人)

別紙 抗告の理由

一、原審は右当事者間の昭和三三年(ワ)第九〇号土地所有権確認等事件につき申立人の負担すべき訴訟費用額を金二万四千三百六十二円と確定する旨の決定を存し該決定は昭和三十七年九月二十六日申立人方に送達せられた

二、然しながら右の如き決定を原審がなした所以は全然理解が出来ないのである

凡そ訴訟費用額を決定するには民事訴訟法第一〇〇条第一〇一条の手続を履践せなければならぬことは論のないところである然して裁判所は同法第一〇一条第一項の催告をすることを要請せられているのである

従つて適式な右の催告がなされざる限り被催告者は陳述をする機会を失うを以て裁判所が訴訟費用額決定を存すも右は違法なものと謂わねばならない

今本件について之を観るに右民事訴訟法第一〇一条第一項所定の書類らしいものを申立人に送達したのであるがそれは別紙の如きものであつて裁判所の印はあるが書記官が出したものやら書記官補が出したものやら判事が出したものやら判事補が出したものやら申立人には全然判らないのであるされば申立人が之を無視して同条第二項の書面を提出せなかつたのは当然である

三、仍而原決定を取消され度く即時抗告に及ぶ次第です

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